WATER & ELECTRICITY / CHAPTER 01
水と電気について
第1章 水は見える、電気は見えない
私たちの暮らしに欠かせない、水と電気。まったく異なるもののようでいて、どちらにも「流れる」という共通点があります。
蛇口をひねれば水が流れ、スイッチを入れれば照明がともる。あまりにも身近な出来事ですが、その流れは、何によって生まれるのでしょうか。
「流れる」という共通点
高い位置にある水槽から配管を下へ延ばし、出口を開くと、水は流れ出します。水面と出口の高さの差によって圧力差が生じるためです。
一方、電池の両端には電位差(電圧)があります。電池と電球を導線でつなぎ、閉じた回路を作ると、電流が流れて電球が点灯します。
水の流れ
水位差によって生じた圧力差が、水を押し流す。
電気の流れ
電位差がある閉じた回路では、電流が流れる。
図は仕組みを理解するための概念図です。電気の矢印は慣用的な電流の向きを表しています。
見える水、見えない電気
水は目で見ることができます。蛇口から流れ落ちる水、水路を流れる水、配管から噴き出す水。流れの様子や勢いを、私たちは直接観察できます。ただし、管の内部の圧力そのものが見えるわけではありません。
これに対して、電流そのものは通常、目に見えません。照明の光、モーターの回転、機器の発熱といった結果から、電気が働いていることを知ります。電圧や電流を正確に確かめるには、測定器が必要です。
見えるかどうかと、安全かどうかは別の問題です。
水も電気も、目に見える現象だけでは、その内部にある力や危険性を十分に判断できません。
「高いところから低いところへ」の意味
ここで一つ、注意しておきたいことがあります。水は必ず下にしか流れないわけではありません。ポンプなどで圧力を加えれば、水は上方へも流れます。大切なのは、流れを生む圧力や位置エネルギーの差です。
また、電気でいう「高い」「低い」は、地面からの高さではなく電位の高低を指します。直流回路では、慣用的な電流の向きは電位の高い側から低い側へと表します。ただし金属導体中の電子の移動方向はこれと逆であり、交流では電圧や電流の向きが周期的に変化します。
水と電気には確かに似たところがあります。しかし、同じ仕組みで流れているわけではありません。似ている部分と異なる部分を分けて考えることが、両者の性質を理解する第一歩になります。
続き・第2章「水圧と電圧、流量と電流」
圧力や電圧があることと、実際に流れることはどう違うのでしょうか。第2章を読む ↓
WATER & ELECTRICITY / CHAPTER 02
第2章 水圧と電圧、流量と電流
蛇口を開くと水が出る。スイッチを入れると電気機器が動く。その流れを生む「差」と、実際に流れる「量」を比べてみましょう。
水を動かす圧力の差
高い位置の水槽から低い位置の蛇口へ水を送る場合、水面と蛇口の高さの差によって圧力差が生まれます。ポンプを使えば、さらに圧力を加えることもできます。
ただし、水圧があることと、水が流れていることは別です。蛇口を閉めていても配管には水圧がかかっています。蛇口を開き、流れる経路ができると水が動き始めます。
電気を動かす電位差
電池のプラス極とマイナス極の間には電位差があります。この差を電圧と呼び、単位はボルト(V)です。電池に電球をつないで回路を閉じると、電流が流れます。
電圧が存在するだけでは、必ずしも電流が流れるわけではありません。スイッチが開いている回路にも電圧がかかっている部分があります。水道の閉じた蛇口と似た関係です。
水:圧力があっても閉じれば止まる
圧力があっても、弁を閉じれば定常的な流れは止まります。
電気:電圧があっても開けば止まる
電位差があっても、回路が開いていれば定常的な電流は流れません。
図は直流回路と静水圧を用いた概念図です。実際の配管・電気回路の詳細を省略しています。
流量と電流は何を表す?
水道の流量は、一定時間に通過する水の体積です。例えば「毎分10リットル(L/min)」なら、1分間に10リットルの水が流れることを意味します。
電気の電流は、一定時間に通過する電荷の量です。単位はアンペア(A)で、1Aは1秒間に1クーロン(C)の電荷が通過することを表します。
水圧と流量、電圧と電流はそれぞれ別の量です。
圧力・電圧は流れを生じさせる「差」に関係し、流量・電流は実際にどれだけ流れるかを表します。
圧力や電圧が高ければ、必ず多く流れる?
同じ配管・同じ弁の開き具合なら、圧力差を大きくすると一般に流量は増えます。しかし配管が細い、長い、曲がりが多いといった条件では、圧力損失が大きくなり、十分な流量を得られないことがあります。
電気も同様に、一定の抵抗を持つ回路では電圧を高くすると電流が増えます。これはオームの法則で表されます。ただし、すべての電気機器が一定の抵抗として振る舞うわけではありません。
設備工事の現場から
給水工事では、元の水圧が十分でも、配管口径や経路の選び方によって、複数の蛇口を同時に使った際の水量が不足することがあります。圧力だけでなく、必要な流量と配管の圧力損失を考えることが大切です。
電気工事でも、電源電圧だけでなく、負荷に流れる電流、電線の許容電流、配線による電圧降下などを確認します。水と電気は異なるものですが、流れを生む条件と、流れる量を分けて考える点は共通しています。
次回・第3章「配管と電線、流れを妨げるもの」
配管の太さや長さと水の流れ、電線や抵抗と電流の関係を、もう少し詳しく見ていきます。