町の設備屋と6,600V
高圧受電設備の更新工事

設備屋コラム #04

 町の設備屋が、キュービクルなどの高圧受電設備を施工する機会は、それほど多くありません。

 普段の仕事では、住宅や店舗などの100V・200Vの低圧設備を扱うことが圧倒的に多く、高圧設備の工事については、いわゆる「外線屋さん」や高圧設備を専門に扱う電気工事会社が中心となります。

 とはいえ、お客様の中には6,600Vの高圧で受電している工場や事業所もあります。

 町の設備屋だからといって、高圧設備とまったく無縁というわけでもありません。

 実際、イシバシ設備でも数年前、お客様のキュービクル内にある高圧機器の更新工事を行いました。

 気中開閉器をはじめ、LBS(高圧交流負荷開閉器)、高圧ヒューズ、高圧進相コンデンサなどを更新する、丸一日がかりの大きな工事となりました。

なぜ、わざわざ6,600Vで受電するのでしょうか?

 一般家庭では、電力会社から100V・200Vの低圧で電気を受けています。

 ところが工場や大きな事業所になると、業務用エアコン、モーター、ポンプ、製造機械、照明など、多くの電気設備を使用します。

 一般に契約電力50kW未満では低圧、50kW以上になると6,600Vによる高圧受電が基本となります。

 では、なぜわざわざ電圧を高くするのでしょうか。

 同じ電力を送る場合、電圧を高くすることで流れる電流を小さくすることができます。

 大きな電力を低い電圧のまま送ろうとすると、大きな電流が必要になり、電線も太くなり、電力損失も大きくなります。

 そこで6,600Vで受電し、需要家側のキュービクルにある変圧器によって200Vや100Vなどへ変圧します。

 その先にあるのは、私たちが普段扱っている分電盤、照明、コンセント、エアコン、ポンプ、モーターなどです。

 高圧と低圧は別世界のように見えて、実は一本につながっています。

高圧は「触らなければ大丈夫」ではありません

 ここまで6,600V、6,600Vと書いていると、なんだか怖い話になってきました。

 設備屋仲間の冗談なら、

 「低圧で感電したら肩こりが治ってラッキー。高圧で感電したら、そのままあちらへ行ってしまってアンラッキー……」

 ……いやいや、冗談です(笑)。

 低圧でも感電は重大な事故につながります。肩こりも治りません。絶対に試してはいけません。

 まして高圧設備は、「触らなければ安全」というものでもありません。充電部に近づき過ぎれば、放電による危険もあります。

 電気は目に見えません。

 だからこそ、必要な安全措置を行い、確認してから作業する。これは100Vでも6,600Vでも変わらない、電気工事の基本です。

朝から停電。「よーいドン」で工事開始

 高圧受電設備を更新するためには、当然ながらその間、需要家の施設を停電させなければなりません。

 当日は朝、電力会社側で需要家手前の開閉器を遮断。

 停電を確認し、検電、残留電荷への対応、接地など必要な安全措置を行ってから、いよいよ作業開始です。

 ここからは、まさに「よーいドン」。

 決められた停電時間の中で、古い高圧機器を撤去し、新しい機器を取り付け、配線・接続を行い、復電できるところまで仕上げなければなりません。

高圧ケーブル、なぜこんな端末処理をするの?

 気中開閉器を所定の位置に吊り下げて固定し、立ち下げた高圧ケーブルを接続していきます。

 しかし高圧ケーブルは、普通の電線のように「被覆をむいて端子につなげば終わり」というわけにはいきません。

 ここで非常に重要になるのが高圧ケーブルの端末処理です。

 高圧ケーブルでは、端末部分で外部半導電層や遮へい層が終わります。そのままでは、その終端付近に電界が集中してしまいます。

 そこでストレスコーンなどによる電界緩和処理を行い、電界をなだらかに分散させ、端末部分の絶縁性能を確保します。

 適切に処理されていなければ、部分放電や絶縁劣化を引き起こし、最終的には絶縁破壊や地絡事故につながる可能性があります。

 見た目をきれいにするためではなく、6,600Vを安全に扱うための、とても重要な処理なのです。

高圧ケーブル端末部の電界集中とストレスコーンによる電界緩和の説明図
高圧ケーブル端末部では、電界を集中させないための端末処理が重要です。

高圧進相コンデンサにも大切な役目があります

 今回更新した機器の一つに、高圧進相コンデンサがあります。

 工場などでは、モーターや変圧器などの誘導性負荷が多く使われます。こうした設備では力率が低下するため、進相コンデンサによって力率を改善し、電気設備や配電系統を効率よく利用できるようにしています。

 しかし、このコンデンサも永久に使えるものではありません。

 長年使用すれば内部の絶縁材料なども劣化します。

 「まだ動いているから大丈夫」と考えるのではなく、製造年や設備の状態、メーカーの更新推奨時期などを確認しながら、計画的な更新を考える必要があります。

古い高圧設備では「PCB」にも注意

 そして古い高圧設備を見るとき、もう一つ忘れてはいけないのがPCB(ポリ塩化ビフェニル)です。

 古い変圧器や進相コンデンサなどには、PCBを使用したものや、絶縁油がPCBに汚染されているものがあります。

 もちろん、「古い高圧機器=PCB入り」ではありません。

 製造者、型式、製造年などを確認し、必要に応じてメーカー情報や分析によって判定する必要があります。

 特に低濃度PCB廃棄物については、現在2027年3月31日までという処分期限が定められています。

 古いキュービクルを使用している事業所では、機器が正常に動いているかだけでなく、「いつ製造された機器なのか」を一度確認しておくことも大切です。

 ※PCBの判定・処分については、機器メーカー、電気主任技術者、関係行政機関、適正な処理事業者などへ確認する必要があります。

そして、その日は雨でした

 さて、ここまで書くと、ずいぶん格好よく工事をしたように見えるかもしれません。

 ところが当日は、風雨。

 高圧機器や接続部分を濡らすわけにはいきませんから、機器を濡らさないよう養生しながらの作業となりました。

 機器は濡らさない。ところが自分たちはびしょ濡れ。

 朝から始まった作業は丸一日。停電時間もありますから、「雨だから今日はやめましょう」というわけにもいきません。

 今になって振り返ると、

 「あの日、よくやったもんだなあ……」

 と思います。

 町の設備屋にとって、高圧受電設備をこれだけ本格的に更新する機会は、そう何度もあるものではありません。

 大変な一日でした。

 しかし同時に、設備屋として非常に大きな「経験値」を稼いだ一日でもありました。

 普段扱っている100Vや200Vの、そのずっと手前にある6,600Vの世界。

 実際にその設備を取り外し、取り付け、接続し、無事に再び電気を送るところまで経験したことで、いつもの低圧設備を見る目も少し変わったように思います。

 設備屋の仕事は、まだまだ奥が深いものです。