アース(接地)は、つながっているだけでは意味がない

設備屋コラム #03

 洗濯機や電子レンジ、エアコンなどを設置するとき、コンセントの近くに「アース」と書かれた端子を見たことがある方も多いと思います。

 普段は電気製品が普通に動いているため、アース線がつながっていなくても、「別に使えているから大丈夫」と思われることがあります。

 しかしアース(接地)は、電気製品を動かすための配線ではありません。機器に異常が起き、漏電したときに人を感電から守るための安全設備です。

なぜアースが必要なのか

 例えば、金属製の外箱を持つ電気機器の内部で電線が傷み、本来流れてはいけないところへ電気が漏れたとします。

 そのとき外箱が帯電し、人が触れることで人体を通って電流が流れれば、感電事故につながるおそれがあります。

 適切な接地が施されていれば、漏れた電流が大地へ流れる経路をつくることができます。また、漏電遮断器などの保護装置と組み合わせることで、異常を検知して電路を遮断し、感電の危険を減らすことができます。

 アースは、普段は何もしていないように見えても、異常が起きたときのために備えている設備なのです。

どんな器具にアースが必要なのか

 すべての電気製品に、同じようにアース工事が必要というわけではありません。

 一般住宅で身近なものでは、設置場所や機器の構造、使用電圧などに応じて、次のような機器で接地が必要になることがあります。

・洗濯機
・エアコン
・電子レンジ
・食器洗い乾燥機
・温水洗浄便座
・電気温水器、エコキュートなど

 特に、水を使う場所や湿気の多い場所、金属製の外箱を持つ機器などでは、漏電したときの危険を考える必要があります。

 ただし、「この家電なら必ずこの種類の接地」と、製品名だけで一律に決められるものではありません。機器の構造、設置場所、使用電圧、メーカーの施工要領などを確認して適切に施工します。

実際のアース工事はどうなっているのか

 アース工事というと、コンセントのところに緑色の線を一本つないで終わり、というイメージを持たれるかもしれません。

 しかし実際には、その線の先がきちんと大地につながり、必要な接地性能が確保されていなければ意味がありません。

 建物では、まず接地極から接地線を引き込み、接地の親線を分電盤などへ持ってきます。

 そして、電源線を各部屋のコンセントや各機器へ配線していくのと同じように、接地線も必要な各コンセントや機器まで配線していきます。

電源の流れ:
分電盤 → 電源線 → コンセント・電気機器

接地の流れ:
接地極 → 接地線 → 分電盤等 → 各コンセント・電気機器の接地端子

 つまり、壁にアース端子が付いているだけではなく、その先が接地設備まで確実につながっていることが大切です。

アースは「つながっていればいい」わけではない

 接地棒を地面へ打ち込み、線をつないだからといって、それだけで十分なアースが取れているとは限りません。

 土の種類、乾燥状態、湿り具合、接地極の施工状態などによって、接地抵抗値は変わります。

 そこで、接地工事を行ったあとは、必要に応じて接地抵抗計(アーステスタ)を使用し、接地抵抗値を測定します。

 ここで測るのは「どれくらい電気を流すか」という意味での導電性そのものではなく、接地極と大地との間の電気抵抗値(Ω:オーム)です。

 接地抵抗は、基本的に値が小さいほど電気が大地へ流れやすいということになります。

接地工事には種類がある

 接地工事には、設備や使用電圧に応じてA種・B種・C種・D種などの種類があります。

D種接地工事
 300V以下の低圧機器などに用いられ、接地抵抗値は原則として100Ω以下です。

C種接地工事
 300Vを超える低圧機器などに用いられ、接地抵抗値は原則として10Ω以下です。

A種接地工事
 高圧・特別高圧機器の金属製外箱などに用いられ、接地抵抗値は10Ω以下です。

B種接地工事
 高圧または特別高圧と低圧を結ぶ変圧器などに施す接地で、必要となる接地抵抗値は、高圧側の1線地絡電流などから算定されます。

 このように、一般住宅などの低圧設備と、工場などで扱う高圧設備とでは、求められる接地の考え方や性能が違います。

 なお、C種・D種接地工事では、一定の条件を満たす漏電遮断装置が設けられている場合に、接地抵抗値について別の扱いが認められる場合があります。現場では設備の条件を確認したうえで判断します。

「アース線がある」ことと「アースが効いている」ことは違う

 ここが、今回いちばんお伝えしたいところです。

 アース端子がある。
 緑色の線がつながっている。
 それだけを見て、必ずしも十分な接地が取れているとは言い切れません。

 途中で線が外れているかもしれません。接地極までつながっていても、必要な接地抵抗値が得られていないかもしれません。

 必要な機器には、必要な方法で接地を行い、必要な接地抵抗値を確保する。

 そこまでできて、初めて安全設備としてのアースが意味を持ちます。

普段見えないところにこそ、安全があります

 アースは、照明のように明るくなるわけでも、エアコンのように涼しくなるわけでもありません。

 普段の生活では、その働きを実感することはほとんどありません。

 しかし、漏電という異常が起きたとき、人が電気の逃げ道にならないようにするために、接地設備は重要な役割を持っています。

 私たち電気工事店が行うアース工事は、単に緑色の線を一本つなぐことではありません。

 接地極を施工し、接地線を必要な場所まで確実につなぎ、必要に応じてアーステスタで測定し、必要な接地性能が得られていることを確認する。

 普段は見えない部分ですが、こうしたところにも電気工事の安全を支える大切な仕事があります。