「お客様第一」と「安全第一」は両立できるのか

設備屋コラム #02

 私たち設備業者は、できる限りお客様のご希望に応えたいと思っています。

 「ここにエアコンを付けたい」
 「今日中に使えるようにしてほしい」
 「できるだけ費用を抑えたい」

 そうしたご希望を聞き、どうすれば実現できるのかを考えることも、私たちの仕事の一つです。

 しかし現場では、ときに「お客様のご希望」と「安全な施工」が、同じ方向を向かないことがあります。

あるエアコン工事でのこと

 過去に何度か、こんなご相談がありました。

 2階の部屋にエアコンを取り付けたい。しかし、室外機を1階に置ける場所がありません。

 そうなると、室外機を2階部分の外壁など、高い場所へ取り付けることを検討することになります。

 もちろん、お客様としては、「なるべく費用を抑えて取り付けてほしい」と思われます。当然のことだと思いますし、私たちもできるだけそのご希望には応えたいと思います。

 ところが、ここで設備屋として悩むことがあります。

 高所に室外機を取り付けるには、室外機そのものを高い場所まで持ち上げ、両手を使って金具への固定、配管接続、電気配線などの作業をしなければなりません。

 現場の条件によっては、はしごを使って無理に作業するのではなく、高所作業車などを使用しなければ安全な作業ができないと判断することがあります。

安全を求めれば、費用が上がる

 では、高所作業車を手配すればいい。

 設備屋の立場だけから考えれば、それで話は終わるのかもしれません。しかし、高所作業車を借りれば当然費用がかかります。その費用は最終的には工事費に反映されます。

 すると、「エアコンを一台取り付けたいだけなのに、そんなにかかるの?」とお客様が思われても不思議ではありません。

 ここで、設備屋としての葛藤が始まります。

 お客様のご希望には応えたい。
 できるだけ安くしてあげたい。
 でも、この現場では、はしごで作業するのは危ない。
 高所作業車を使えば安全に作業できる。しかし、その分だけ工事費は高くなる。

 金額を聞いて、お客様がエアコンの設置そのものを諦めてしまうかもしれない。

 そして、ときにはこんなことまで頭をよぎります。

 「うちが断っても、別の業者さんなら、危険を承知ではしごでやってしまうのではないだろうか」

 それなら、多少無理をしてでも自分たちがやった方が、お客様のためになるのではないか。しかし、そこで事故が起きたらどうするのか。

 私は過去に二度、三度と、このような判断を迫られる現場を経験してきました。

「お客様の言う通りにする」ことがお客様第一なのか

 ここで考えさせられるのが、「お客様第一」とは何だろうかということです。

 お客様のご希望どおり、できるだけ安い方法で工事をする。それも一つのお客様第一かもしれません。

 しかし、そのために作業する人間の安全を犠牲にしてよいのでしょうか。

 万一、転落事故が起きれば、作業員だけの問題では済みません。お客様の敷地内で事故が起き、工事は止まり、お客様にも大変なご心配とご迷惑をおかけすることになります。

 そうなってしまえば、「お客様のために安く工事をした」という最初の目的そのものが、意味を失ってしまいます。

 だから私たちは、ときにはお客様に「この条件では、安全のため高所作業車が必要です」と説明しなければなりません。

 そして、それによって工事費がご予算に合わないのであれば、残念ながら工事を見送るという選択をしなければならないこともあります。仕事をする側にとっても、決してうれしい判断ではありません。

安全第一は、お客様第一の反対ではない

 「お客様第一」と「安全第一」。

 現場にいると、この二つの間で迷うことがあります。今でも、すべての場面で簡単に答えを出せるとは思っていません。

 それでも、長く設備工事に携わってきて思うことがあります。

 安全を犠牲にしてまでお客様のご希望に応えることは、本当に「お客様第一」なのだろうか。

 工事をして終わりではありません。作業する人間が無事に工事を終え、お客様にも安心して設備を使っていただく。そこまで含めて一つの工事なのだと思います。

 お客様のご希望には、できる限り応えたい。
 しかし、安全を犠牲にしてまで応えることはできない。

 その二つの間で悩みながらも、最後には安全な方法を選ぶ。

 それが結果として、本当の意味での「お客様第一」につながるのではないか。

 現場で何度も迷ってきた今、私はそう考えています。